日本人CEO・ディレクター、西側愛弓が目指すフィリピンのファッション教育

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フィリピンは、多様な文化や習慣と密接に結びつき、西洋の影響を受けたユニークなアイデンティティを持つ国です。神戸出身25歳の西側愛弓さんは、バックパッカーとして世界中を旅したなか、大自然や人々の生き方に感動し、フィリピンに心を奪われました。生まれ育った日本の社会とは多く異なる環境では多くの課題にも向き合い、過去6年間、二国を往来しながらフィリピンの社会を変えようとする大きな計画を進めていました。

(Coxco Inc.(DEARMEfashion、coxco Lab を含む)の創設者・CEO、西側愛弓さん(写真)) 

(Coxco Inc.(DEARMEfashion、coxco Lab を含む)の創設者・CEO、西側愛弓さん(写真)) 

西側さんは、サステイナブルファッションが標準化された世界を作るという大きな夢を持っています。 そして、その先には、ファッションのノウハウとビジネスの成功実績を活用し、フィリピンの子供たちを貧困から救う手助けを目指しています。 

 2019年12月、彼女は日本を拠点にアパレル会社 coxco Inc を設立。繊維商社 Yagi & Co と提携しながら、アップサイクリングを通じてドレス、プルオーバーなどをオンラインで販売。さらに、クラウドファンディングを通じて資金を調達し、マニラの最貧地区で生活する子供たちの生活をより良くするためのツールが与えられる coxco Lab事業を始動。現在までに、マニラで7回ものファッションショーの開催を実現しました。

coxco は世界中で起きている環境・社会問題に向き合うアパレルブランドです。 フィリピンでは、日本での機会、特に高質な教育がまだ不足しているため、弊社ブランドとフィリピンコミュニティーを結び付ける必要があると思い、非営利団体 DEARME を設立しました。
— 西側愛弓

フィリピンのカーボンフットプリント(CO2の排出量)

  しかし、なぜフィリピンで二酸化炭素排出量の削減について考え始める必要があるのでしょうか。 フィリピンが世界的な環境問題にどの程度貢献しているかを最初に理解することが必要です。 調査によると、2008年のフィリピンの一人当たりのエコロジカルフットプリントは1.3gha(グローバルヘクタール)であり、世界平均の1.8ghaの範囲内であり、東南アジアではフットプリントの小さい国です。しかし、フィリピンの生物生産が可能な土地面積は1人あたり未だ0.6ghaであり、消費需要に追いつかない状態です。61%は食品産業に基づく計算ですが、調査に欠けている主なデータポイントは固形廃棄物管理であり、マニラ首都圏などの都市部では依然として大きな課題点になっています。 国際復興開発銀行は、都市人口の急増により固形廃棄物が2025年までに165%増加すると予測しており、不適切な廃棄物処理、非効率的な廃棄物収集、および処理施設の不足は、国の固形廃棄物管理における主要な懸念事項の1つです。

  また、フィリピンの1/3の人口が一度着の衣類を捨てていると言われています。「YouGov」の調査によると、1番の原因はファストファッション、21%は「流行が終わったから」、18%は「ファッションセンスが変わったから」、14%は「着るのに飽きている」と答えています。 人口の増加、急速な経済成長、工業化に伴いフィリピンのファストファッションが増加し続けるにつれ、一人当たりの衣類や繊維を捨てることによって発生する廃棄物は急激に増加し、健康被害や地表水汚染、洪水などの深刻な環境影響に貢献しています。

 これらの懸念に対して、日本とフィリピンの国で変化を起こしたいという西側さんの思いが非常に刺激的です。

( 世界中で年間500万トンの布地が処分されています。  (coxcoの写真))

( 世界中で年間500万トンの布地が処分されています。  (coxcoの写真))

サステイナブル・ファッション”の基準や説明責任が薄れつつあるブランディングキャンペーンをはやりの言葉だけにしたくない。
— 西側愛弓

 日本から学ぶ 

サステイナビリティが世界にどのような役割を果たすかを伝えることこそが、現在のファッション業界の重要課題点だと西側さんが語ります。 オンライン上で親しみやすい衣料品やコンテンツを作成することで、衣料品の持続可能性への取り組みをさらに強化する必要があります。

 これまで coxco が重視した課題は、(1)廃棄衣料、そして(2)残布。  

(1)に対しては、日本環境設計(JEPLAN)のBRINGテクノロジーサービスを通してポリエチレンテレフタレート(PET)プラスチックのリサイクルが行われた再生生地を用いた服を作りました。(2)は世界で年間約500万トンと言われる残布問題に対して、coxcoではサンプル生地をアップサイクルして服を作る取り組みをしています。また「Jクウォリティ」の認証を受けている品質が高く、かつ労働環境にも優しいモノづくりを目指しています。

  日本に比べ、フィリピンのファッション業界は2021年に7億4900万米ドルに達すると予測されており、SNSなどのオンラインコンテンツを通じてのECショッピングがさらに成長しています。成長時期だからこそ、世界で起きている変化に気付き、coxco のようなサステイナブルな手法を取り入れ、将来のビジネスモデルを建設していく必要があります。

そこで、今後のフィリピン社会で重要な役割を果たすのが教育です。

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 世界中のファッションデザイナーの機会均等化

 coxco Lab は、サステイナビリティを超えた大きな挑戦に挑みました。それは、フィリピンの子供たちに教育を届けること。国際数学科学研究(TIMSS)の調査によると、フィリピンは高校理数科の平均成績が38ヵ国中34位にランクされており、教育支出は1998年の18.2%から2005年に12.4%へ減少しています。若者の識字率は年々低下していますが、教育制度が整っていないため、学生はしばしば自分たちの生活様式にとらわれ、将来の可能性が奪われていきます。

 そんな厳しい中、西側さんがマニラを拠点に計画しているファッションスクールは、多くの子供たちに教育と希望を届けることを目標に、無償性ファッションスクール「coxco Lab」で(1)Discover Meと(2)Inspire Youの2つのコースを提供する予定です。

 今までのボランティア活動を通じて、西側さんはフィリピンの子供たちがいかに創造的で自信を持っているかに気づき、彼らの興味・関心を成長させる機会・施設が必要だということに気付きました。 彼女は、上記の2フェーズのコースを通じて子供たちにファッションの専門知識を教授しながら、自分自身に向き合い、挑戦する機会を与えることで、夢を見つけるためのガイダンスを行います。「Discover Me」は、生徒がさまざまな色、生地、トレンドなどに触れるファーストコンタクトを与えるコース。 「Inspire You」は、世の中に存在する現実世界の産業や環境問題について子供たちを教育し、ファッション業界について意識を高めるコースです。

将来はファッションスクールの学生にcoxcoで働く機会も与え、今までチャンスがなかった子供たちに有給のポジションを獲得できるサイクルを完成させたいと思います。 私の夢は、彼らが私と同じように、情熱を見つけることで、他の国を探検し、他の子供たちに刺激を与える機会を得ることです。 
— 西川愛弓
( 大きな笑顔で集合写真。フィリピンの恵まれない子供たちのために実施した coxco Lab のファッションショー。(写真))

( 大きな笑顔で集合写真。フィリピンの恵まれない子供たちのために実施した coxco Lab のファッションショー。(写真))

  coxco Lab のファッションスクールの開校予定は?

 昨年は、7回目のランウェイショーと並行し、新入生向けのファッションスクールの開校が予定されていましたが、コロナウイルスの影響により、すべての計画が一時停止しています。しかし、パンデミック中でもファッションを通じてフィリピンの若者を助けたい西側さんの思いは止まりません。coxco Lab の支援活動は止まりなく、すでに学校に登録している生徒にチャリティー活動としてマスクや食品の配布を行っており、厳しい世の中の状況でも活動し続けています。 

  coxco Lab がフィリピンにもたらす新しい概念と多様なアプローチを元に、経済発展と並行にアジアの「ライジング・スター」として注目され続けるためには、フィリピン国民の全世代がサステイナブルファッションについて知識を深め、参加し、努力していきたいものです。 

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プロフィール情報

フルネーム:西側愛弓

企業名:coxco Inc/NGO DEAR ME

活動場所:マニラ首都圏マカティ、東京

教育歴:神戸女学院大学